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26 Feb 2020
水仙(Daffodilダフォデル)

早春に咲く花である水仙は、英語名Daffodilといいアングロ・サクソン語の“早く来るもの”を語源としています。春の足音が聞こえてくる頃には、いたる所で水仙が咲き始めます。日照時間が短く暗いイギリスの冬の終わりを告げる花として知られているのは、「ラッパ水仙」。日本人がピンクの桜の開花を待つようにcheerfulなこの黄色い水仙を見ると、イギリス人は春の訪れを感じて気分も明るくなってくると言われています。水仙は春を呼ぶ花、そこから転じて「希望」の花として、癌のチャリティー活動のシンボルとしても使われています。

 

イギリスの詩人で湖水地方をこよなく愛したウイリアム・ワーズワース(William Wordsworth 1770-1850)が1807年頃に書いた水仙の詩があります。多くのイギリス人は、この詩の最初の一行を読めば水仙の詩・春の訪れを感じる詩と思うと言われています。

 

I wandered lonely as a cloud

That floats on high o’er vales and hills,

When all at once I saw a crowd,

A host of golden daffodils;

Beside the lake, beneath the trees,

Fluttering and dancing in the breeze.

 

と続きます。

水仙が、湖畔の木々の下で風にそよめき踊っている様子が目に映ってきます。

 

「スイセン」という名は、中国での呼び名「水仙」を音読みしたものです。これは「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典に由来しています。水辺に咲く花の姿を中国では仙人になぞらえたのです。

 

イギリスのフラワーマーケットでは学名に関係なく一般的に一本の茎に一輪の花をつけたものをダフォデル、一本の茎に複数の花をつけたものをナーシサスといいます。

ダフォデルはナーシサス(Narcissus)属です。ギリシャ神話にでてくる美少年ナルキッソスに由来する学名です。伝説によると、ナルキッソスはその美しさにさまざまな美女から申し出があったものの、高慢にはねつけて恨みをかったため、復讐の女神ネメシスにより、水鏡に映った自分自身に恋をしてそのまま憔悴死してしまい、そして水辺でうつむきがちに咲くスイセンに変わったといわれています。水仙は水辺であたかも自分の姿を覗き込むかのように咲くのです。

 

水仙はウエールズの国花でもあり、ウエールズでは3月1日の聖デイビッド・デー(St. David’s Day) に胸にこの水仙を飾ってお祝いをします。6世紀後半のサクソン人との戦いで、聖デイヴィッド(Saint David)は敵と区別するために、ウエールズ兵のヘルメットにリーク(西洋ネギ)をつけることを命じました。ウエールズ軍は勝利を収め、それ以来リークは勝利の象徴として用いられるようになったといいます。リークはウエールズ語で「ケニン Cennin」、そして水仙もウエールズ語では「ケニン・ペドル Cennin Pedr」と、どちらも同じケニンであることからリークと同様に縁起物とみなされるようになったとのことです。

 

マリ・キュリー・グレイト・ダフォデル・アピール

(Marie Curie’s Great Daffodil Appeal)

キュリー夫人として知られているマリ・キュリーは、ご存知のように放射能の研究で2度のノーベル賞を受賞した物理学者・化学者です。 

 

イギリスでは、毎年3月はキュリー夫人の功績を讃えて闘病末期(主に癌患者)の人々のために、ダフォデル・アピールという名称の慈善活動が行われています。

 

1986年に癌協会に賛同したボランティアの人達が、街々で希望の花、春先3月に咲く水仙を配って募金活動としたのが始まりです。1995年には生花から現在の造花バッジ水仙Daffodil Pinに変わりました。日本の赤い羽根募金のような活動ですね。この募金活動が癌の研究に一役買うと知る人達が献金をして、胸に水仙のピンバッジをつけてもらっているのです。

 

少しずつ昼間の時間も長くなりリージェント・パーク、セント・ジェイムス・パーク、ホランド・パーク等の公園、川辺、野原に咲く水仙をみて、春の訪れを感じてください。