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1月~2月初旬、セビル・オレンジが最盛期を迎えると、イギリスではマーマレードの話題で持ち切りとなる。スペイン原産のセビル・オレンジはビター・オレンジとも言われ、強い苦味と酸味があるのが特徴だ。生食には向かない品種だが、この独特の苦さと酸っぱさは、風味豊かなマーマレードを作る上では欠かせない。それゆえに、セビル・オレンジの旬ともなれば、マーケットや食品店では特設コーナーが現れる。大きなバスケットを手に持ち、大量のオレンジを買い込む人の姿は冬の風物詩とも言える。
マーマレードなどのジャム作りは、現代の家庭に今なお残る、数少ない保存食文化だが、その歴史は古い。遥か昔、古代ギリシアでは、豊富に穫れるマルメロ(カリンの近縁、別名クインス)をハチミツとともに壺に詰めて保存していた。また、17世紀に入り、砂糖が広く流通し始めると、ヨーロッパでは、マルメロを砂糖漬けにした菓子が流行し始めた。その中でもイギリス人が特に好んだとされるのが、ポルトガル産の『マルメラーダ』だ。『マルメラーダ』は砂糖漬けのマルメロに、ローズウォーターとムスクの香りを施した繊細な菓子だった。この『マルメラーダ』の製法は他の果物にも応用できたことから、やがて一般の食文化にも広まり、現在知られるマーマレードの原型を作ったとされる。
イギリスでは、家庭ごと、ホテルごとにオリジナルレシピがあると言われるほど、マーマレードは長く親しまれている食品だが、食嗜好の多様化が著しい昨今、マーマレード人気は徐々に陰りを見せている。その一方で、伝統を守ろうとする活動も活発化しており、郊外を中心にマーマレード作りを祝う催しが次々と開催されている。その中でも、ひと際、賑いを見せるのは、カンブリア地方のペンリスで行われる『ダルメイン・マーマレード・アワード』だ。マーマレード世界一を競うこの審査には、毎年3000近い応募が集まる。近年は、生姜や唐辛子の入った珍しいフレーバーに加え、日本産の柚子マーマレードなども出品され、話題となっている。伝統を守るだけでなく、楽しむことも忘れない精神は、如何にもイギリス流と言えよう。こうした試みから生まれた現代版マーマレードは、今再び、注目を集めている。
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