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5 Sep 2019
The Promsと共に過ごす夏

今年はイギリスには珍しく何十年振りかの蒸し暑い夏の日々がありました。涼しくても暑くてもイギリスの夏と切り離せないのが The Proms です。イギリスの音楽愛好家達は4月になりますと定期券を買い、夏の来るのを待ち焦がれています。2ヶ月に渡り毎晩 Royal Albert Hall に集まる人を見ていますとなんとイギリスには大勢の音楽愛好家がいるのかと毎年のことながら驚いています。

 

私がプロムスに参加し promenade(アリーナに立って聴く人)になってからわずか13年足らずですが私のグループの中には30年、40年も、高校時代から来ている熱心な音楽愛好家がたくさんいるのに感心しました。そのグループに入れて頂き2年前までは私も本当の promenade で皆と一緒に立って聴いていました。1895年にSir HenryWoodが野外でコンサートを催した始めの頃、聴衆は自由に歩きながら聴いたり、座ったり、寝そべったりして聴いていたようですが、今でもホールの中央のアリーナで聴く人達は芝生の上でなく硬い床の上ですが座ったり、寝そべったりして聴いています。普通の音楽会では見られないプロムスならではの特別な光景だと思います。

 

幸い私の家は Albert Hall に近いので毎朝朝食後には整理券を貰いに Albert Hall に出かけ、夕方開演一時間前にまた Albert Hall に行き整理券と引き換えに6ポンド払ってday ticket を買い会場に入ります。これが夏の8週間の私の日課でした。今まで70数回ある演奏の半分くらいは聴きに行っていましたが、年と共に回数が減り今年は20回くらいに減りました。

 

世界に名の知れた楽団を有名な指揮者によってクラシックからジャスまで演奏する音楽を6ポンドで毎日聴けるのはこの上ない贅沢だと何時も思っています。BBC Proms になってからは未発表の作曲も加え無名の作曲家、コンクールで優勝したばかりの若手の音楽家の演奏も披露してくれます。ことしも Beethoven、Schumann、Rachmaninov などクラシック音楽から Nina Simone、Duke Ellington のジャスなど幅広いプログラムで聴衆を楽しませてくれ拍手が鳴り止みませんでした。

 

Last Night of the Proms と呼ばれるコンサート最後の日は音楽会と言うよりは音楽祭で black tie の男性、イブニングドレスの女性、目を見張るようなひょうきんな服装の男女、普段のコンサートの雰囲気とは全然違い、特に冗談を交えた指揮者のスピーチが終り、Elgar の ‘Pomp & Circumstance’. Thomas Arneの ‘Rule Britannia’ を全員で歌う頃は風船を飛ばす人、口笛を鳴らす人達で大変なお祭り騒ぎとなります。最近はイギリスの旗だけでなく国際色豊かな旗の波が会場にひらめくようになりました。この時ばかりは流石のイギリス人もお祭り騒ぎに浮かれて大声で歌っています。The Last Night of the Proms の日にいらっしゃり、イギリス社会のある一面を経験なさるのも良い思い出になると思います。勿論 ‘Rule Britannia, Britannia rule the waves’ など歌い大英帝国時代の愛国心を思い起こさせるような雰囲気には耐えられないと言って最後の日を避けるイギリス人も結構います。

 

イギリス国歌斉唱と蛍の光で The greatest festival in the world と言われる The Proms の幕を閉じる頃はイギリスには冷たい秋風が吹く頃になっています。私達の仲間は毎年 Albert Hall の外にテーブルを出し、大々的なドリンクパーティーを開き、みんなで持ち寄ったドリンクと食べ物で12時過ぎまでパーティーを楽しみ、来年の再会を誓って名残惜しいお別れをかわします。

The Proms はイギリスの夏に無くてはならない重要な音楽会として根付いています。

 

    

©Photo: Chikako Osawa-Horowitz