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1 Jul 2016
EU離脱の国民投票(EU Referendum)

今年世界で最もホットなキーワードはなんといっても間違いなく“ブレグジット”(BREXIT)でしょう。「ブリテン(英国)」と「イグジット(脱出、転じてEU離脱)」の合成語で、4年前に懸念されたギリシャのユーロ圏離脱、つまり「グレグジット」から派生した用語です。このEUから「残留」「離脱」の2者択一を問う国民投票(リファレンダム)が6月23日に実施され、拮抗の末4ポイントの僅差(離脱派51.9% 残留派48.1%)でかろうじて離脱派が勝ちました。しかしながら今回の結果は英国が抱えている「経済」VS「感情」を主要な軸にして英国民が真二つに分断されている状態にある事を誰の目にもはっきりと露呈するとともにかえってその亀裂を広げている為、これをどう解決するかが目下、緊急な課題となっています。

 

ものの見事に意見が分かれたこの投票結果ですが、核となって前者を構成しているのがロンドン、スコットランド、北アイルランド等の中産階級を中心にした経済活動の活発な地域でここにグローバル世代の若年層が加わります。 一方、後者の感情を主に煽っているのは一連の移民問題や現政権、エスタブリッシュメントへの憎悪で、こちらは経済の疲弊した地方都市で緊縮財政で貧しい生活を強いられている労働者階級を中心に、EU懐疑派に主権の回復(完全な主権の獲得)によって強力な主権国家に戻ることで、大英帝国の復活という「歴史の針の巻き戻し」を図りたいご懐古趣味の高齢者が加わる事で”感情”に弾みがついて表を投じる結果になりました。残留派のキャメロン首相やそのブレーンが必死に説得したものの、本来自分たちがまず受けるべきと考える福祉や雇用、ひいては大英帝国の誇りが奪われてしまう事を恐れた彼らの心には残念ながら届かなかったようです(注:中産階級では52%が残留、32%が離脱を希望ですが、これが労働者階級になると36%が残留、50%が離脱希望と結果が見事に逆転しました)。

                                                           

実は投票前の調査では保守党内でさえ閣僚含めて議員330人のうち残留支持が約170人、対する離脱支持が約130人と相反していたのですが、両者間の対立は残留派を牽引していたキャメロン首相の目の前で盟友と考えられていた前ロンドン市長ボリス・ジョンソンが突如として反旗を翻して離脱派に回った時に尚一層拍車がかかることになりました。

 

当然ながらイギリスがEUを離脱すれば、戦後進められてきたヨーロッパ統合の初めての大きな亀裂となるだけでなく、最終的には世界平和に対する亀裂にも繋がる等、今回の国民投票がイギリスのみならず世界中の政治や経済に間違いなく大きな影響をおよぼすのは明白です。その為、この悪循環によってもたらされる連鎖“ドミノ倒し”現象を危惧したドイツのメルケル首相やフランスのオランド大統領、イタリアのレンツイ首相は投票直前まで英国のEU残留を強く望むとともに、離脱した場合、取りかえしのつかない大惨事になるだろうと事前に強く警告していましたが、それでも投票直前まで僅かの差で残留派が勝利するだろうと大方では予想されていたので離脱派に軍配が上がった時にはまさに先の見えない時代の幕開けとなりました。

 

今までもデモクラシー(民主主義)を基本にしながらもこのような極めて専門性の高い課題に対して国民投票で答えを出すというやり方が果たして本当に妥当なのか、その必要性や危険性については知識層を中心にかなり懸念されていましたが、それを裏付けるように今回国民の間に戸惑いや後悔、不安が生じ、投票後に離脱派に票を投じたことを後悔する人が7%、逆もまた然りで4%いる事が報告され、パーラメントに設置された再投票(「残留または離脱の得票率が60%未満」で、「投票率が75%未満」だった場合、2度目の投票を実施するという内容)を求める請願への署名は26日夜時点で既に350万人を超え、殺到したアクセスに一時サイトがダウンするほどでした。

 

この現象から離脱派が主張していた“BREXIT(ブレグジット)”に絡め、REGRET(後悔)とEXIT(離脱)を組み合わせた“REGREXIT」(リグレジット)”や、BRITAINとREGRETを足した“BREGRET(ブリグレット)”という造語が新たに生まれ、ツイッターなどで使われています。

 

投票結果はこうした条件に合致するものの請願が認められる前に国民投票は終了しているのでこれから適用するのは難しいですが、それでも英下院で議論する対象になるかを決める要件の署名数については定数の10万人をはるかにうわまわっている為、今後下院の委員会によって議題として取り上げ協議される模様です。

 

なお、離脱派をシンボルとして牽引したボリス・ジョンソンは次期首相選には名乗りでないと表明した事が30日付で報道されています。

 

正式なEU離脱手続きに向けてこれからの進展に今世界中が注目しています。

 

 

*EUとは?

 

European Union(欧州連合)の略称

欧州連合条約により戦後設立されたヨーロッパの地域統合体。独特な経済的および政治的協力関係をもつ民主主義国家の集まりで、EU加盟国はみな主権国家ですが、その主権の一部を他の機構に譲るという世界で他に類を見ない仕組みに基づく共同体ですべての人欧州市民に平和、繁栄及び自由を保障するとともに、平和構築や開発援助などを通じ、世界の平和と安定に積極的に貢献する事を目指しています。現在28カ国が加盟しています(英国が離脱すれば27カ国)。

 

英国は1973年からEUに加盟しています。