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1 Sep 2015
9月 英国の学校制度

9月になりました。

英国では公立校で6~7週間、私立校に至っては10週間もの長い夏休みが終わって、新しい学年のスタートです。

 

 

 

 

 

 

 

 

8月も半ばを過ぎると、文房具店や制服や通学用の靴を売る店に"Back to School”の看板が掲げられ、学齢期の子どもや学生のいる家庭では新学年度が始まる準備を嫌が上にも意識させられるようになります。

 

3学期制なのは日本同様ですが、英国の義務教育期間は、日本より少し長くて5歳で始まり16歳で終わります。義務教育終了期間までは、日本の学校制度のように、全国一律に、また公立でも私立でも同じ年齢による学校の区分が決められている学校制度ではないのが英国の教育制度の特色の一つです。

下記の表でもわかるように、この間の学年割は公立、私立によって、また男女によって異なる場合がありますが、大体下記の通りに区分されます。

5歳~11歳(あるいは13歳)までが初等教育

11歳(あるいは13歳)~16歳までが中等教育

16歳~18歳までが大学進学準備教育(6th Form)

 

16歳の義務教育終了学年の5月から6月にかけてはGCSE(The General Certificate of Secondary Education)と呼ばれる全英統一中等教育終了試験が行われ、8月の第3週には成績がA*, A,B,C,D,E,F,U(落第)の8段階で発表されてテレビや新聞のニュースでも大きく話題になります。この成績結果は2年後の大学進学や将来の就職の際に履歴書にも書かなければならないので皆真剣です。

受験科目や科目数の選択は生徒の能力や将来の進路などを踏まえて自由裁量に任されていますが、一般的に英語、数学、理科(化学、生物、物理)、社会(歴史、地理)を中心に外国語を加えて8~10科目受験する生徒が多いようです。

日本ほどは大学進学率が高くない英国では、多くがこの義務教育段階を終えると就職し、社会に出ることになります。

大学などの高等教育に進学する場合は、大学入学のための全英統一資格試験(Aレベル)を受けるために更に学校に残って2年間勉強を続けます。

英国は殆どの大学が国立大学で、入学の合否判定はこのAレベルの結果に加えて、GCSEの結果、6th Formまで在籍していた学校の内申書や本人の志望動機のエッセイ、面談など様々な側面から審議されます。

日本の大学入試のように一発の入学試験結果で合否が決まる訳ではないので、何年も掛かって仕上げるプロジェクトのような趣きです。

 

5歳から6th Formまで、英国の公立校は日本と同様、区域制が原則で、数校の中から選択できることもありますが、住居が決まれば入学する学校は自ずと決まり、費用は殆ど掛かりません。

対して私立校の学費は、毎日通学する学校で年間1万5000ポンド(300万円弱)程度、全寮制の学校では年間3万5000ポンド(700万円弱)も掛かります。

法外とも思える学費の私立校で教育を受けることが、英国ではなおも多くの人に根強い憧れや支持を得るには理由があります。

元々は聖職者や王侯貴族に仕える人材を養成するために設立された英国の私立校(Independent School)は、大英帝国時代、植民地に渡って将来現地の人々を陣頭指揮する人材を育てるために細かな発達分類、繁栄をみました。

池田潔著の『自由と規律』によって広く日本でも知られるようになったPublic Schoolは、

14世紀から19世紀に設立された13歳から18歳の生徒が通う私立学校で、英国の中等教育と6th Formを担う私立学校3,000校の上位7%のエリート校を指すといわれています。

英国での『パブリック・スクール』というのは、米国などにおいての「公立校」を意味するのではなく、聖職者や王侯貴族に仕える者を育成するためにできた私立学校を一般の庶民に開放する、つまり公=Publicに開放したことからこう呼ばれるようになりました。

特にイートン校やハーロウ校に代表される”The Nine”と呼ばれる歴史の古い名の通った学校は、今なお古い伝統を保持しています。

<イートン校の制服は常時燕尾服>

    

 

 

 

<ハーロウ校の式服は燕尾服に麦藁帽>

                           

 

 

 

 

 

 

 

<街並全部がハーロウ校>

 

 

 

 

 

 

 

今でこそケンブリッジ大学やオックスフォード大学(オックスブリッジ)の学生は全世界から集まってきますが、長きに渡り、多くのオックスブリッジの学生はパブリックスクール出身者で占められてきました。

英国の政界や経済界の重鎮はパブリックスクール出身者の比率が高いので、日本のような大学による学閥ではなくて、パブリックスクールによる学閥があるとさえ言われています。各パブリックスクールにはその学校独自の呼び名(学年名、制服、先生、スポーツ、毎日のスケジュール、寮などに関して)があり、学校同士頻繁にスポーツの試合や音楽コンサートなどで交流の機会があるので、少し会話をすればすぐにお互いにどの学校の出身かがピンと来るということです。

 

現在でも多くのパブリックスクールは全寮制で、生徒は学びの場と隣接しているハウスと呼ばれる寮(学年縦割りで一つの寮に60~70名程度)に生活し、校長先生や教頭先生、教務主任や授業を担当する多くの先生達も学校の敷地内の教員住宅に家族と共に暮らしています。

授業は月曜から土曜の午前中まで。週の半ばと土曜日の午後には他校とのスポーツの試合が組まれています。日曜日は学校やハウスの行事、ソサエティーと呼ばれる同好会の講演会などがあります。

敷地は広大で、教室、図書館、音楽練習室、コンサートホール、講堂、劇場、プール、スポーツジム、テニスコート、ラグビー・サッカー・クリケットなどのフィールド、陸上競技のトラックの他、ゴルフコースを備えている学校も珍しくありません。

 

かって大きな戦争など急に応じて徴兵制を課した英国では、パブリックスクール出身者は入隊すると即座に指揮官を務めたその名残で、高学年になるとそれぞれ陸海空軍・海兵隊に志願して分かれて軍事教練を行う学校もあります。戦闘的なことを好まない生徒はその時間に、老人ホーム訪問など地域に貢献するボランティアを行っています。

<イートン校全景>           

 

              

<ハーロウ校全景> 

 

  

<ハーロウ校スピーチルーム・講堂>        

 

 

 

 

 

 

 

 

ではここで、日本では室町時代の1500年代に創立された全寮制のパブリックスクールに在籍しているある生徒の一日のスケジュールを見てみましょう。

 

7:00に起床、朝食。その後40分の授業が5コマ。それぞれの授業の間の5分の休憩時間に走って教室移動。授業が行われる各教室はとても離れているので、休み時間には生徒がよく走っています。新入生は道に迷って授業に遅れることもしばしば。入学して2週間程度は遅刻も大目に見てもらえるほどです。

13:00頃からの昼食を早めに切り上げて、この日は所属している聖歌隊の練習へ。

14:30からまた40分の授業が3コマ。授業後に音楽室で明日のピアノレッスンに備えて練習。18:00頃から夕食。普段は夕食後はハウスに戻り、19:00頃から3時間程度宿題や授業の予習に費やすのですが、この日は所属しているスクールオーケストラの定期演奏会が19:30からなので、ハウスに戻った際に通常の制服から式服の燕尾服に着替えて講堂へ。終演後打ち上げに軽く出て、23:00頃ハウスへ戻り、できなかった宿題や予習のために翌朝4:30起床の目覚ましをかけて就寝。

 

パブリックスクールでは“Busy boys are good boys.”とよく言われますが、正しくそんな感じ。分刻みの目の廻るような忙しさです。

 

パブリックスクールの生徒の大半は、忙しい授業の合間に何かしらの楽器のレッスンを受けていますが、中には校内でロックバンドを組んで長期休暇にはパブに出演する生徒や国際的な音楽コンペテイションに挑戦するツワモノもいます。

皆で力を合わせて何かを成し遂げる意義を学ぶことを目的にして教育の一環として行われるスポーツの試合、ハウス対抗歌合戦やコンサート、劇などに本格的に取り組んだ結果、それをプロとして生業にした卒業生も数多くいます。

行事の合間やスケジュールが緩やかな日の時間をいかに上手く調整して勉強や自分の趣味に費やす時間を生み出すかを、日常の生活を通して自然に身に付けていけることもパブリックスクールの教育の特色です。

また有名パブリックスクールには、それなりの上流階級の子息が集うので、友情だけでなく将来に役立つ人脈を育むことができるということも魅力の一つかもしれません。

 

多くのパブリックスクールは長期休暇などに一般を対象に公開見学会を開催しています。

ロンドン観光も見所満載ですが、それぞれのパブリックスクールのホームページにアクセスして、ぜひツアーに参加してみてください。

パブリックスクールでの教育の一端をあなたも実感できるかもしれません。

ちなみに、イートン校は現在あちらこちらの校舎の改築中なので2016年くらいまで一般向けツアーを中止していますが、ハーロウ校では一般向けツアーを開催しています。

詳細は下記をご覧ください。

http://www.harrowschoolenterprises.com/events/school-tours/public-tours/