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26 Mar 2019
世界に誇る英国ロイヤル・バレエ・スクール

今回は一般には知られていない英国ロイヤル・バレエ・スクールについて書かせて頂きたいと思います。まず、ロイヤル・バレエ・スクールと呼ばれる学校は、実はもう1つ、ベルギーのアントワープに存在し、この学校と区別するために日本語では「英国」を入れ、英国ロイヤル・バレエ・スクールと表現します。

 

英国ロイヤル・バレエ・スクールは、ロアー・スクール(Lower School)とアッパー・スクール(Upper School)の2つに分かれており、計8年間のバレエトレーニングを受講できる英国で唯一のバレエ専門学校です。

 

ロアー・スクールは、ロンドン市とサリー州境にあるリッチモンド国立公園の中にあるホワイト・ロッジ(White Lodge)を校舎兼寮として使用しています。リッチモンド公園内には野生の鹿が約600頭放し飼いになっており、池には野生の鴨や白鳥が生息し、自然豊かな環境です。このロッジは元々はジョージ2世のハンティングロッジとして1730年に建てられました。名称もストーン・ロッジ、オールド・ロッジなど呼ばれていた時期もあります。1955年に英国ロイヤル・バレエ・スクールが正式にホワイト・ロッジを学校として使用するようになるまで、歴代の王族の方々に親しまれてきた建物です。現在も元王の部屋であったところは校長室に、元女王の部屋は事務室になっています。2、3年前までは学校内に英国のバレエの歴史を紹介した博物館が存在していましたが、運営が難しくなり現在はデジタルアーカイブとしてネットで観覧することができます。

 

両スクールの生徒の99%は寮生活をしています。残りの1%は学校の近くに実家があるなど、毎日通うことを学校から認められている生徒のみです。

 

ロアース・クールは英国教育機関ではセカンダリースクールにあたり、11歳から16歳、7年生から11年生が所属、アッパー・スクールは17歳から19歳が所属し、シックスフォームに相当します。

 

しかもホワイト・ロッジはセカンダリースクールでもある為、1日4時間以上のバレエレッスンの他に普通の教科も学び、11年生(16歳時)では中等教育試験であるGCSEの受験も必須です。日本人など他国からの留学生には、第二外国語としての英語の試験があり、それに受からない場合は、どんなにバレエの才能があっても留学ビザが発行されません。そしてアッパー・スクールはAレベルを受ける授業も行われています。その為両スクール共に、1日の授業時間は長く、朝8時半から6時までびっちり授業またはバレエレッスンが行われ、ロイヤルオペラハウスでの公演出演も重なると、公演のリハーサル、そして本番のパフォーマンスで夜遅くまで、または週末を返上して公演に参加しています。時にはクリスマス休暇も正月もなく親元を離れてロイヤルオペラハウスの舞台に立っていることもあります。

 

クラシックバレエダンサーを育成する学校ではあるものの、イギリス特有のキャラクターダンス、欧州伝統ダンス、モダンダンス、コンテンポラリーダンスも習得義務科目に入っています。イギリス伝統ダンスとしては、モリスダンス、スコティッシュダンス、アイリッシュダンスがあり、欧州伝統ダンスは、ロシアダンス、ハンガリーダンス、スパニッシュダンス等があります。

 

一般にロイヤルはロシアバレエとも、フレンチバレエとも違い、特に決まった型がないと言われいますが、実は細かな手の動きや顔の表情等、ロイヤルならではのエレガントな踊りがあり、ロイヤル・バレエ・スクール出身者はそれが自然に身につくらしく、踊りを見ればロイヤルに在籍したかどうかが分かるとバレエのプロの方々は言われています。

 

入学方法は学校が独自で行うオーディションでの選抜、またはローザンヌ国際バレエ大会などで入賞し、奨学生に選ばれた生徒が入学することができます。

日本ではプロのバレエダンサーになるための登竜門の1つとして毎年2月に開催されているローザンヌ国際バレエ大会に多くの日本人が挑み、入賞し、ロイヤル・バレエ・スクールでトレーニングしたのちに、素晴らしい世界的なダンサーとして世界各国で活躍しています。その代表としてKバレエの代表であり、まだ現役で踊ってらっしゃる熊川哲也氏、最近現役を引退された吉田都氏がいます。

 

オーディションで求められているものは、もちろん身長、体型、足の甲の形、柔軟性、音感、人間としての素質、バレエダンサーとしての素質等です。

 

ロアー・スクールの入学定員は男女それぞれ12人ずつと決まっており、毎年世界中から何千人もが応募し、かなりの競争率です。アッパー・スクールも同様ですが、比較的、国際バレエ大会で入賞した生徒がクラスの3分の1を占めることもあり、純イギリス人の割合はかなり低く、留学生が多くなる傾向にあります。また、ロアー・スクールの生徒が自動的にアッパー・スクールに入学を許可されることはなく、必ず一般と同じオーディションを受けます。

 

そして毎年進学バレエ試験があり、どんなに普通教科の成績が飛び抜けていても、やはりバレエスクールですから、学校が求める基準に満たしていない生徒は容赦なくはじき出されます。また、10代といえど、ダンサーとして恥ずかしくないマナーや常識の習得にも力を入れており、美しい言葉遣いや礼儀正しい振る舞いができる学校としても有名です。生徒の中にはあまりにも厳しいバレエの世界を体験し、バレエは自分には合わないと気づき、普通の学校へ編入していく生徒も少なくありません。

 

今年の卒業生で、7年生から毎年行われている進学試験に合格し、8年間のトレーニングを無事受けることができた生徒は24人の中で4人のみ、しかし残念ながらロイヤル・バレエ団に入団できませんでした。

 

過去に8年間英国ロイヤル・バレエ・スクールに所属し、バレエ団に入団でき、現在も活躍しているダンサーは、ローレン・ カスバートソン氏、フランチェスカ・ヘイワード氏、ヤスミン・ナグディ氏、マシュー・ボール氏、そして現在ロシアのマリンスキー劇場でプリンシパルのザンダー・パーリッシュ氏(ロイヤル入団10年にしてマリンスキーバレエの芸術監督にヘッドハントされました)などです。バレエファンでしたらお馴染の名前ではないでしょうか。

 

これほど過酷な現実の中でも、大好きな踊りを踊るため彼らは絶えず努力し続けています。

 

ロイヤル・バレエ団に入団できなかったからバレエ生命が終わるわけではなく、英国内にはイングリッシュ・ナショナル・バレエ団、ランベルト・ダンス・カンパニー、欧州全体でも素晴らしいバレエ団はいくつも存在し、「英国ロイヤル・バレエ・スクール卒業」は1つのブランドでもあり、彼ら自身の誇りにもなり、それぞれに世界中で活躍をしています。

 

ロイヤル・バレエ・スクール

https://www.royalballetschool.org.uk/

 

ロイヤルオペラハウスでのロイヤル・バレエ団の公演

http://www.roh.org.uk/about/the-royal-ballet

 

 

写真:リッチモンド国立公園内にあるホワイト・ロッジ(Lower School)

© Royal Ballet School, Lower school. Photo: Chikako Osawa-Horowitz